脳梗塞から生還しても、「元通り」にはならないことがあります。
俺もそうでした。
退院してからも、手足のしびれ、感覚の違和感、
ものが飲み込みにくい感じ、視野のおかしさ——
いくつかの後遺症と向き合いながら生活することになりました。「後遺症ってどんなものがあるの?」
発症前には全く知らなかったこの問いに、
当事者の目線から答えていきます。
後遺症はなぜ起きるのか
脳梗塞で血流が途絶えた部分の脳細胞は、酸素・栄養不足によってダメージを受けます。脳はそれぞれの部位が異なる機能を担っているため、どこが損傷したかによって、現れる後遺症の種類が変わります。
右脳が損傷した場合は左半身の麻痺や空間認識障害、感情コントロールの変化が起きやすく、左脳が損傷した場合は右半身の麻痺や言語障害が現れやすくなります。脳幹が損傷した場合は呼吸障害や意識障害など、生命に関わる深刻な症状が出ることもあります。
また、後遺症は1つに限らず、複数が同時に現れるケースもあります。俺自身も複数の後遺症が重なっていました。
参考:脳梗塞の前兆を見逃さないためのチェックシートで早期発見しよう
主な後遺症の種類
① 運動麻痺・しびれ
脳梗塞後の後遺症として最も多いのが、手足の麻痺やしびれです。損傷した脳と反対側の体に症状が出るのが特徴で、片側の手足が動かしにくくなる「片麻痺」が代表的です。
軽度の場合は「力が入りにくい」「細かい動作がしづらい」程度ですが、重度になると歩行や日常動作が大きく制限されます。
俺の場合、手足のしびれと温痛覚麻痺が残りました。
最初は「感覚がおかしい」という程度でしたが、
リハビリを続けるうちに少しずつ改善していきました。
それでも、完全に元通りとはいかない部分もあります。
② 感覚障害
触れた感覚が鈍い、温度がわかりにくい、痛みを感じにくい・過敏になるといった症状です。見た目ではわからないため、周囲に気づかれにくい後遺症のひとつです。
やけどや怪我をしても気づきにくいため、日常生活での注意が必要になります。
しびれと感覚障害は今も完全にはなくなっていません。
「慣れた」という感覚が正しいのかもしれないけれど、
自分の体なのに、どこか他人の体を触っているような
不思議な感覚は今も残っています。
③ 言語障害(失語症・構音障害)
脳の言語を司る領域が損傷されると、言葉に関わる後遺症が現れます。大きく2種類に分かれます。
失語症は、話す・聞く・読む・書くといった言語機能全般に障害が出る状態です。言いたいことが出てこない、相手の言葉が理解できないといった症状が現れます。
構音障害は、言葉の理解はできているのに、唇や舌の麻痺によって発音がうまくできなくなる状態です。
④ 嚥下障害(えんげしょうがい)
食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる障害です。喉の筋肉に麻痺が生じることで起きます。むせやすくなる、食事に時間がかかる、誤嚥性肺炎のリスクが上がるといった問題につながります。
俺も退院後しばらく、飲み込みにくさが続きました。
食事中にむせることが増えて、
「こんなところにも影響が出るのか」と驚きました。
⑤ 視野障害
脳の視覚に関わる領域が損傷されると、視野の一部が欠けたり、片側が見えにくくなったりする症状が出ます。「半盲」と呼ばれる状態では、視野の左右どちらかが丸ごと見えなくなることもあります。
視野に違和感があることに気づいたのは、
発症してからしばらく経ってからでした。「なんか、角度によって見えにくい気がする」という程度でしたが、
検査をしてみると視野の一部に欠けがあることがわかりました。
自分では気づきにくい後遺症の代表例だと思います。
⑥ 高次脳機能障害
記憶力の低下、注意力の散漫、物事の段取りができなくなるといった症状です。外見からはわかりにくいため、「怠けている」「性格が変わった」と誤解されやすく、本人も自覚しにくいのが特徴です。
家族や職場など、周囲の理解が特に重要な後遺症です。
後遺症は「固定」ではない
後遺症と聞くと、「一生このまま」というイメージがあるかもしれません。
俺もそう思っていた時期がありました。
でも、リハビリを続けるうちに少しずつ回復していく部分があって、
「脳は変わることができる」という実感が持てるようになりました。
後遺症は時間の経過やリハビリによって改善するケースも多く、「必ず固定されるもの」ではありません。特に発症から3〜6ヶ月は脳の回復力(可塑性)が最も高い時期とされており、この時期の集中的なリハビリが回復の鍵を握ります。
まとめ
脳梗塞の主な後遺症をまとめます。
- 運動麻痺・しびれ:片側の手足が動かしにくくなる。最も多い後遺症
- 感覚障害:触覚・温度感覚・痛覚などが鈍くなる
- 言語障害:失語症(言語機能全般の障害)と構音障害(発音の障害)の2種類
- 嚥下障害:飲み込みにくさ・むせやすさ。誤嚥性肺炎のリスクも
- 視野障害:視野の一部が欠ける。自覚しにくいケースも多い
- 高次脳機能障害:記憶・注意・判断力などの低下。見えにくい後遺症
後遺症の種類や程度は、損傷した部位と範囲によって大きく異なります。複数が重なることも珍しくありません。大切なのは、症状を正確に把握した上で、適切なリハビリと支援につなげることです。
著者:のぞむ(脳梗塞・心不全・糖尿病の当事者)
自分の闘病経験が、誰かの「まさか自分が」を防ぐヒントになれば、このブログを書く意味があると思っています。
※この記事は当事者の体験と公開情報をもとに作成しています。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。




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