第4話|リハビリ、思ってたんと違った

第4話|リハビリ、思ってたんと違った 体験談

一般病棟に戻り、本格的なリハビリが始まった。

リハビリと聞いて、最初に何をイメージするだろうか。俺はなんとなく、軽い体操とかストレッチとか、そういうものを想像していた。

全然違った。


リハビリは3種類あった。

理学療法作業療法言語療法だ。

理学療法は歩行訓練がメインだ。杖で歩いたり、筋力トレーニングをしたり、バランス感覚の訓練をしたりする。

作業療法は手先の訓練だ。字を書いたり、タイピングしたり、実生活に沿った動作を一つひとつやり直していく。

言語療法は記憶力や会話能力の訓練だ。パズルやゲームなど、IQテストみたいな内容をひたすらやる。

言語に関しては問題がないと言われ、こちらはすぐに終了した。

問題は、理学療法と作業療法だった。


まず歩くことから始めなければならなかった。

最初は歩行器だ。杖より安定しているし、車椅子より身軽で動きやすい。思っていた以上に使いやすくて、調子に乗ってリハビリルームを4〜5周したら、クタクタになって昼飯まで爆睡した。

34歳が、廊下を数周歩いただけで爆睡する。

笑えない話だが、これが現実だった。

次第に杖を使って歩く訓練になった。不安定だったが、車椅子より行動範囲が広がる。早く一人で歩けるようになりたいと思いながら、毎日少しずつ距離を伸ばしていった。


作業療法が、実は一番きつかった。

細かい作業をすると、目眩が強くなって気分が悪くなるのだ。

例えばこれだ。細いピンの上におはじきを乗せる、という訓練がある。地味に見えるが、意外と難易度が高い。少し手が震えただけで崩れる。集中力と手先の器用さが同時に必要になる。

最初は4本しか立てられなかった。

健康な状態でもこれをやるのは大変だと思う。それが脳梗塞後の右手でやるのだから、もうどれだけ時間がかかったか。

でも、やるしかなかった。


なぜこんなに地道なリハビリが必要なのかというと、バランス感覚に障害が残っていたからだ。

よくこんなことを言われた。

「見た感じ、もう普通に歩いてるじゃないですか」

「杖もなしで歩けるなら大丈夫なんじゃないですか」

気持ちはわかる。でも、全然大丈夫じゃなかった。

バットをおでこに当ててグルグル回った後に歩こうとする感覚、わかるだろうか。まさにああいう状態が、常に続いているのだ。気を張っていれば短距離はなんとかなる。でも長時間・長距離になると、体力的にも精神的にも一気にきつくなる。

だから筋肉をつけて、多少のめまいではフラつかない体を作る必要があった。

毎日のリハビリは、そのためにあった。


それでも、日に日に回復しているのが自分でわかった。

最初は数メートルを必死に歩いていたのが、廊下を歩けるようになり、外を少し歩けるようになり、繁華街まで歩けるようになった。

3週間ぶりに屋外に出た日のことは覚えている。

病院の外の空気を吸って、空を見上げた。

当たり前の景色が、全然当たり前じゃなかった。


そしてリハビリには、思いがけない楽しみもあった。

アイスだ。

午後のリハビリが終わった後、売店でアイスを買うのが日課になっていた。毎日違う種類を買って、ケース内の全種類を食べきることが密かな目標になっていた。

重い検査があった日も、きつい訓練の後も、とにかくアイスを食べた。

脳にはブドウ糖が必要だから、アイスを食べるのはむしろ医学的に正しいはずだ。そういうことにしておいた。

著者:のぞむ(脳梗塞・心不全・糖尿病の当事者)
自分の闘病経験が、誰かの「まさか自分が」を防ぐヒントになれば、このブログを書く意味があると思っています。
※この記事は当事者の体験と公開情報をもとに作成しています。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。

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