退院してからしばらく、気持ちが沈んでいる時期がありました。
「命が助かったんだから前向きにならなきゃ」
そう思えば思うほど、うまくいかない。
怠けているのか、弱いのか、と自分を責めることもありました。でも後から知ったのは、脳梗塞後のうつは
「心が弱いから」起きるのではないということです。
脳が変化することで引き起こされる、れっきとした症状なのです。
脳卒中後うつ(PSD)とは
脳梗塞などの脳卒中後に現れるうつ状態を「脳卒中後うつ(PSD:Post-Stroke Depression)」といいます。
研究によれば、脳卒中生存者の約3分の1がPSDを経験すると報告されています。また、発症後3ヶ月以内に症状のピークを迎えることが多く、1年以上経過しても高い頻度で継続する場合があることも示されています。
3人に1人以上——決して珍しい話ではありません。むしろ、脳梗塞後に起きやすいことをあらかじめ知っておくことが大切です。

なぜ脳梗塞後にうつが起きるのか
PSDの原因は大きく2つに分けられます。
① 脳の物理的な変化
脳梗塞によって脳が直接ダメージを受けることで、感情や意欲をコントロールする神経回路が乱れます。これは「心が折れた」のではなく、脳の器質的な変化による症状です。
② 環境の変化・心理的ストレス
突然の入院・後遺症・仕事や生活の変化・将来への不安——こうした環境の変化が重なることで、精神的に追い詰められることがあります。
俺の場合、診断を受けたわけではありませんでしたが、
退院後に気持ちが沈んでいる時期はありました。「元気にしなきゃ」と思うほど空回りする感じ。
仕事に戻っても、以前のように気力が出ない。
それが「脳梗塞の後遺症として起きやすいこと」だと知っていたら、
もう少し自分を責めずに済んだかもしれないと思います。
主な症状
うつ病と不安症は脳卒中後に最も多い気分障害です。強く頻繁に気分の浮き沈みが見られる「情動調節障害」では、急に泣いたり笑ったりしてしまい、それらが状況にそぐわず意図せずに起こってしまうこともあります。
PSDの代表的な症状には以下のものがあります。
- 気分の落ち込み・無気力が続く
- 何をしても楽しめない
- 睡眠の乱れ(眠れない・眠りすぎる)
- 食欲の低下または増加
- 集中力・意欲の低下
- 急に泣く・怒りやすくなる(情動調節障害)
リハビリへの意欲がなくなる、通院が億劫になる——こうした形でPSDが現れることもあります。
リハビリへの影響も大きい Neurotech
PSDは単なる気分の落ち込みにとどまらず、身体機能や認知機能の回復を阻害し、日常生活動作(ADL)の再建を遅らせる大きな要因となります。早期に発見し、適切なケアを行うことは、身体のリハビリを進める上でも極めて重要です。
「気持ちの問題」として放置していると、回復全体が遅れる可能性があります。

治療・対処法
脳の損傷でうつ病を発症している場合、服薬が有効と思われます。薬が効果を示さない場合、認知行動療法や心理療法など、様々な治療の選択肢があります。
自分では「甘えているだけ」と思っていても、症状が2週間以上続くようであれば、主治医や精神科・心療内科に相談することをためらわないでください。
家族や周囲の人の理解も重要です。「元気出して」という言葉より、「そういうこともあるよ」という受け止め方が、本人の回復を助けます。
まとめ
- 脳梗塞後のうつ(PSD)は生存者の約3人に1人以上が経験する
- 原因は「心が弱い」からではなく、脳の物理的変化や環境の変化による
- 主な症状:気分の落ち込み・無気力・睡眠障害・情動調節障害など
- PSDはリハビリの回復を遅らせる要因にもなる
- 症状が2週間以上続く場合は、主治医や専門家に相談する
- 「甘え」「気のせい」と自己判断しないことが大切

著者:のぞむ(脳梗塞・心不全・糖尿病の当事者)
自分の闘病経験が、誰かの「まさか自分が」を防ぐヒントになれば、このブログを書く意味があると思っています。
※この記事は当事者の体験と公開情報をもとに作成しています。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。


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