正直に言うと、俺自身は退院後に「以前より疲れやすくなった」
とはあまり感じませんでした。でも、同じ病棟にいた患者さんや、
ブログを通じて知り合った当事者の方からは
「とにかく疲れる」「以前の半分も動けない」という声をよく聞きます。脳梗塞後の疲れやすさは、後遺症の中でも特に見えにくく、
周囲に理解されにくいものです。
自分は経験していないからこそ、
正確に伝えなければと思い、この記事を書きます。
脳梗塞後の疲れやすさは珍しくない
脳梗塞や脳出血のあとに「易疲労性(いひろうせい)」や「倦怠感」が現れる人は、30〜90%にのぼるといわれています。
これは「入院で体力が落ちたから」だけでは説明できません。体力は戻っても疲れやすさが続く、という人が多く、脳そのものの変化が深く関わっています。
手足の麻痺や言語障害と違い、外から見えないため、「なまけているだけ」「気持ちの問題」と誤解されやすいのが、この症状の難しさです。

なぜ疲れやすくなるのか
① 脳の処理能力が低下する
脳梗塞によってダメージを受けた部位では、情報処理能力が低下します。以前は無意識にできていた動作——歩く、話す、集中する——に、より多くのエネルギーが必要になります。
同じことをしているのに消耗が大きくなるため、「前と同じことをしただけなのにぐったりする」という感覚が生まれます。
② 脳が修復しようとする反応
脳にダメージが加わると、修復のためにサイトカインと呼ばれる物質が放出されます。このサイトカインが疲労感・倦怠感を引き起こすとされていますが、詳しいメカニズムは現在も研究中です。
「脳が必死に修復しようとしているから疲れる」とも言えます。これは「怠けている」のではなく、体の正常な反応です。
③ 体の動かし方が非効率になる
麻痺や感覚障害が残っている場合、体を動かす際に余分な力を使うことになります。健康な人がほとんどエネルギーを使わずにできる歩行でも、脳梗塞後は何倍もの消耗をすることがあります。
④ 睡眠の質の低下
脳梗塞後は睡眠の質が下がりやすく、十分寝ても疲れが取れないことがあります。睡眠時無呼吸症候群が合併している場合は特に注意が必要です。

「疲れるから動かない」の悪循環に注意
疲れやすさへの対処として「安静にする」を選びがちですが、これが悪循環を生むことがあります。
疲れやすい → 動かない → 体力・筋力が落ちる → さらに疲れやすくなる
この悪循環を断ち切ることが、疲れやすさの改善において最も重要なポイントです。「疲れるから動かない」ではなく、「疲れない範囲で少しずつ動く」という姿勢が大切です。
対処法——無理せず続ける
こまめな休憩を取り入れる
一度に長時間活動するのではなく、「動く→休む→動く」のサイクルを意識します。疲れを感じる前に休憩を入れることで、トータルの活動量を維持できます。
リハビリを継続する
専門家の指導のもとでリハビリを続けることが、身体機能の回復につながり、疲れやすさの軽減にも効果があります。退院後も外来リハビリや自主トレを継続することが大切です。
睡眠の質を改善する
規則正しい就寝・起床リズムを整え、十分な睡眠時間を確保します。就寝前のスマートフォン使用を控え、寝室の環境(温度・明るさ)を整えることも睡眠の質向上に役立ちます。
活動量を「見える化」する
スマートフォンの歩数計やメモを使って、1日の活動量を記録します。「今日は動きすぎた」「昨日より活動できた」という変化が見えると、自分のペースをつかみやすくなります。
周囲に伝える
疲れやすさは外から見えません。家族や職場の人に「同じことをしても以前より消耗する」という事実を正直に伝えることが、理解を得る第一歩です。
俺は疲れやすさをあまり経験しませんでしたが、
経験した人の話を聞くと、
「誰にもわかってもらえない」という孤独感が一番つらいと言います。見えない症状だからこそ、
「なまけているわけじゃない」という事実を
周囲の人にも知っておいてほしいと思います。
いつまで続くのか
疲れやすさが続く期間には個人差があります。発症直後から感じる人もいれば、1年以上経ってから出てくる人もいます。
リハビリを続けることで徐々に改善していくケースが多いですが、数年単位での付き合いになることもあります。「いつか必ず治る」と断言はできませんが、適切な対処を続けることで生活の質を上げることは十分可能です。
まとめ
- 脳梗塞後の疲れやすさ(易疲労性)は30〜90%の人に現れるとされる
- 原因は脳の処理能力低下・修復反応・非効率な体の動き・睡眠の質低下など
- 「見えない症状」のため周囲に理解されにくい
- 「疲れるから動かない」の悪循環に注意する
- こまめな休憩・リハビリの継続・睡眠改善が対処の柱
- 周囲の人に症状を正直に伝えることも大切


著者:のぞむ(脳梗塞・心不全・糖尿病の当事者)
自分の闘病経験が、誰かの「まさか自分が」を防ぐヒントになれば、このブログを書く意味があると思っています。
※この記事は当事者の体験と公開情報をもとに作成しています。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。


コメント