「なんか変になった」と気づくのに、時間がかかることがあります。
手足は動く。言葉も話せる。
でも、なぜか物事がうまく進まない。
約束を忘れる、段取りが立てられない、感情が抑えられない——脳梗塞の後遺症には、こうした「外から見えにくい障害」があります。
それが高次脳機能障害です。
高次脳機能障害とは
高次脳機能障害とは、脳梗塞やくも膜下出血といった脳血管障害や、事故などによる脳外傷で脳がダメージを受けたことにより、注意力・記憶力・言語・感情のコントロール等がうまく働かなくなる認知機能の障害です。外見からは分かりづらく「見えない障害」とも呼ばれます。ご本人も周囲も症状に気づきづらいため、周囲から理解されにくく、本人・家族は辛い思いを抱えやすいです。
手足の麻痺や言語障害と違い、見た目には「回復した」ように見えるのに、実際の生活では大きな支障をきたす——これが高次脳機能障害の難しさです。

主な症状の種類
① 記憶障害
新しいことが覚えられなくなる、さっき話したことを忘れる、約束を忘れる——こうした症状が代表的です。
発症前の記憶(昔の出来事や知識)は比較的保たれていても、発症後の新しい情報が記憶に定着しにくくなるのが特徴です。「また同じことを聞いてくる」「メモをしても確認しない」といった形で周囲に気づかれることがあります。
② 注意障害
注意障害は、集中力の維持や必要な情報への注意が難しくなる状態です。前頭葉やその神経回路の損傷が原因となり、情報の選択・切り替え・持続といった機能が低下します。脳梗塞でこの部位が損傷すると、集中力が低下し注意が逸れやすくなります。
「2つのことを同時にできない」「少し経つと話の内容が頭に入ってこなくなる」といった形で現れます。本人は「疲れやすくなった」と感じるケースも多いです。
③ 遂行機能障害
遂行機能障害は、目標の設定や計画の立案、行動の順序立てが困難になる状態です。主に前頭葉が関与し、この部位は思考、判断、計画などの機能を担います。
「料理の手順がわからなくなった」「仕事のタスクをどこから始めればいいかわからない」「急な予定変更に対応できない」といった症状として現れます。
「何もやる気がない」「だらしなくなった」と誤解されやすい症状のひとつです。
④ 社会的行動障害
感情のコントロールが難しくなり、ちょっとしたことで強く怒ったり、急に泣き出したりすることがあります。また、周囲への配慮が難しくなる、欲求を抑えられなくなるといった変化が現れることもあります。
「性格が変わった」と家族に感じさせることが多く、本人も自覚しにくい症状です。
⑤ 半側空間無視
脳卒中後に多い症状で、右の脳を損傷した患者の30〜40%に発生するといわれています。脳の病巣と反対側の刺激に対して発見・反応しにくくなる状態です。
たとえば左側にある食事を食べ残す、左側から来る人に気づかない、文字を書く時に左側に寄れないといった形で現れます。本人には「見えていない」という自覚がないことも多いです。
なぜ「見えにくい」のか
高次脳機能障害が厄介なのは、
本人も気づきにくいという点です。「なんとなく前より頭が回らない気がする」という程度で、
「自分は障害を持っている」とは思いにくい。
周囲からも「怠けている」「元気そうなのにおかしい」
と受け取られてしまうことがあります。外から見えない分、孤立しやすい障害だと思います。
高次脳機能障害は中途障害のため、以前できていたことがうまくいかなくなります。本人も周囲も症状に気づきづらく、周囲から理解されにくいという特徴があります。
本人が「なんかおかしい」と感じていても、周囲に伝わらない。伝わらないから「気のせい」「甘え」と片付けられてしまう——そのギャップが、当事者と家族の両方を苦しめます。
診断・支援はどこで受けられる?
高次脳機能障害の診断は、神経内科・脳神経外科・リハビリテーション科などで受けることができます。神経心理学的検査(記憶・注意・遂行機能などを測るテスト)を通じて評価されます。
また、都道府県ごとに高次脳機能障害支援センターが設置されており、本人・家族からの相談を受け付けています。「病院でうまく伝わらない」「生活で困っていることがある」という場合は、こうした相談窓口を利用することも選択肢のひとつです。
参考:国立障害者リハビリテーションセンター「高次脳機能障害情報・支援センター」
リハビリで改善できる?
高次脳機能障害はリハビリによって改善が期待できます。注意障害や記憶障害に対する認知リハビリテーション、日常生活の中で補助ツール(メモ・スケジュール帳・タイマーなど)を活用する代償手段の訓練などが行われます。
完全に「元通り」になるとは限りませんが、症状との付き合い方を学び、生活の質を上げていくことはできます。

まとめ
- 高次脳機能障害は、脳梗塞後に現れる「見えない障害」
- 記憶障害・注意障害・遂行機能障害・社会的行動障害・半側空間無視などの種類がある
- 外見からわかりにくいため、本人も周囲も気づきにくい
- 「性格が変わった」「怠けている」と誤解されやすい
- 神経内科・リハビリ科での診断、高次脳機能障害支援センターへの相談が有効
- リハビリや代償手段の活用で、生活の質を改善できる

著者:のぞむ(脳梗塞・心不全・糖尿病の当事者)
自分の闘病経験が、誰かの「まさか自分が」を防ぐヒントになれば、このブログを書く意味があると思っています。
※この記事は当事者の体験と公開情報をもとに作成しています。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。


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