脳梗塞で倒れた直後、唾も飲み込めなかった。よだれは垂れ流すだけで、口の中には、よだれを吸い取る機械を入れられていた。
ICUを出る頃、初めて唾をゴクリと飲み込めた瞬間があった。すぐに看護師に伝えた。それくらい、飲み込むという当たり前の動作が、当たり前じゃなくなっていた時期があった。
今回は、嚥下障害とはそもそもどんな後遺症なのか、俺の経験を交えて整理する。
嚥下障害とは何か
嚥下(えんげ)とは、口に入れた食べ物や飲み物を、飲み込んで食道・胃へ送る一連の動作のことだ。嚥下障害とは、何らかの原因でこの動作がうまくできなくなった状態を指す。
嚥下は、単純そうに見えて実はいくつもの工程でできている。口の中で食べ物を噛んで唾液と混ぜ、舌で喉の奥へ送り、「嚥下反射」という反射によって喉頭蓋という蓋が気管をふさぎ、食べ物が食道へと導かれる。脳梗塞でこの一連の動きに関わる神経(舌咽神経・迷走神経など)がダメージを受けると、この流れのどこかがうまくいかなくなり、嚥下障害が起こる。
誤嚥性肺炎のリスク
嚥下がうまくいかないと、食べ物や唾液が誤って気管に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が起こることがある。誤嚥した内容物が肺に入ると、誤嚥性肺炎につながる危険性がある。
俺自身、これで肺炎になった。唾液が飲み込めないまま少しずつ肺に流れ込んでいたようで、ICUで治療を受けることになった。脳梗塞の後遺症には、嚥下障害以外にもさまざまな種類がある。

俺の場合——ICUで唾も飲み込めなかった日々
発症直後から、唾もよだれも飲み込めなかった。口から垂れ流すだけの状態で、よだれを吸い取るための機械を口に入れられていた。
そんな状態がしばらく続き、ICUを出る頃になって、初めて唾をゴクリと飲み込めた瞬間があった。「あ、飲み込めた」とすぐに気づいて、看護師に伝えたのを覚えている。当時のICUでの様子は、こちらの記事にも書いている。

リハビリはせず、自然に回復した
俺の場合、嚥下機能は自然に戻ったので、言語聴覚士によるリハビリなどは特に受けなかった。ただ、これは全員に当てはまるわけではないらしい。嚥下障害が重い場合は、言語聴覚士による嚥下訓練(喉や舌の運動、飲み込み方の練習など)が必要になるケースも多いという。
食事の形態は段階的に戻った
唾を飲み込めるようになってから、最初の1週間ほどは流動食だった。そこから徐々に柔らかい食べ物に切り替わり、少しずつ普通の食事に戻っていった。嚥下機能が落ちている人向けに、飲み物にとろみをつけたり、食べ物の大きさや硬さを調整したりする「嚥下調整食」という考え方もあるらしい。
今も残る飲み込みにくさ
嚥下機能はほぼ回復したものの、まったくの後遺症なしというわけでもない。以前、耳鼻科で検査を受けた際、喉の動きが少し悪いことがわかった。急いで食べたり、慌てて飲み込んだりすると、今でもむせやすい。
今は、よく噛むこと、ゆっくり食べることを意識している。それだけで、むせる頻度はかなり減った実感がある。
食べることは生きること
食べられない期間を経験したからこそ、食べることの大切さや喜びを、以前より強く感じるようになった。当たり前に食事を楽しめることは、決して当たり前じゃない。これからも、食事をいつまでも楽しめる状態を保っていきたいと思っている。
脳梗塞後の食事については、こちらの記事でもまとめている。

著者:のぞむ(脳梗塞・心不全・糖尿病の当事者)
自分の闘病経験が、誰かの「まさか自分が」を防ぐヒントになれば、このブログを書く意味があると思っています。
※この記事は当事者の体験と公開情報をもとに作成しています。医療上の判断は必ず医師にご相談ください。


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